土壌中には病原菌、害虫、線虫、雑草の種子などが棲息し、栽培にあたってはまず土壌の消毒が必要です。そのための土壌消毒剤には土壌中を隈なく拡散できるガス剤が適しています。
クロルピクリンは拡散能力に優れ、土壌中の病原菌、害虫、線虫、雑草種子の防除にシャープな力を発揮し、高い評価を受けてまいりました。しかし、刺激性や催涙性をもつため作業者や周辺環境への影響も大きく、正しい取扱いが必要です。
クロルピクリンによる土壌消毒には適正な土壌消毒機の使用とポリエチレンシートによる被覆は欠くことはできません。特に被覆は防除効果を上げるためだけではなく、環境への悪影響を大幅に減らすことが実証されています。
最近、クロルピクリン注入に適した土壌消毒機が各種開発され、全面マルチ土壌消毒法やマルチ畦内同時消毒法などの新技術により、薬剤注入とマルチ被覆の作業が同時に行われ、作業中でもほとんど刺激臭を感ずることなく、安全に作業ができ、大気への拡散を大幅に抑えられるようになりました。また、機械による同時作業ができ、作業効率は大幅に向上します。
クロルピクリン工業会では、社団法人日本くん蒸技術協会の指導のもと、農機具メーカーおよび防除機メーカーの協力を得て、露地栽培や施設ハウス内での安全な使用技術の確立に取り組んでまいりました。
ここでは最新の処理技術に基づいた、クロルピクリンのより安全な使い方、処理機のより効率的な使い方についてご説明しましょう。
これまでに行ったクロルピクリンの環境実態調査によると注入後のシートによる被覆は大気拡散を防ぎ、環境に対しての安全性を高めるばかりでなく、薬剤の効果を高めるので、シートによる被覆は必ず行ってください。
クロルピクリンの安全使用には適正な土壌消毒機の使用が不可欠です。
ここにご紹介する全面マルチ土壌消毒機とマルチ畦内同時消毒機による処理法はマルチ被覆を自動的に行うと同時に、安全使用のためのいろいろな工夫がなされており、クロルピクリンの刺激臭をほとんど感じることなく、安全に作業ができます。
全面マルチ土壌消毒機(歩行型)
全面マルチ土壌消毒機(乗用型)
●薬液注入と同時に自動的にマルチ被覆ができます。
●薬液注入はセンサー輪により常に土中でのみ吐き出されます。
●注入口にストッパーが装着されているので旋回時に液ダレがありません。
●ポンプにより一定量を正確に注入できます。
●乗用型・歩行型が揃っていますので、露地栽培でも、ハウス内でも、規模に合わせて選択できます。
注入口(ストッパーの働きにより
地上への引き上げ時の液ダレが
ない)
ポンプにより一定量が注入される
センサー輪により
走行時のみ薬液注入が行われる
薬液の流入状況は確認窓より
把握できる
シートはテープにより自動的に
止められる
投薬作業中はガスの検知も無く、臭いや刺激も感じなかった。
作業は1,600m²の広さを2時間半(10a当り約1時間半)で終了し、効率的な作業が行えた。10日後では、ガスは完全に抜けていた。
投薬作業中 (ハウス開放) |
作業終了4時間後 (閉鎖ハウス内) |
処理10日後 (閉鎖ハウス内) |
|
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気中濃度 | 0ppm | 1ppm | 0ppm |
地表面濃度 | 0ppm | 1ppm | 0ppm |
●1996年9月7~18日
●埼玉県加須市
●1,600m²のビニール温室
●夏場のため、暑い時間を避け、午前5時半に投薬を開始し、8時に終了した。
肥料・堆肥等を施した圃場の畦立て・マルチと同時に、クロルピクリンを注入する方法です。マルチフィルムをくん蒸用被覆シートに兼用し、一定期間放置後、そのまま作物を植えつけます。経済的・省力的な新しい土壌病害防除法です。
●畦内のみに薬剤を注入するため、薬量が全面処理に比べて2/3~1/2となり、薬剤費が少なくて済みます。
●地温を確保し栽培効率を上げるマルチフィルムを、くん蒸シートに兼用するため、資材費が少なくて済みます。
●薬液注入後直ちに被覆されるため、刺激臭がほとんどなく、環境に対して悪影響を及ぼしません。
丸うね注入口1条機
平高うね注入口2条機
平うね注入口5条機
管理機や耕耘機にこの消毒機を連結して使います。機械が小型であるため、小回りがきき、手軽に作業ができます。薬液注入後は速やかにシートにより被覆してください。注入口に薬液ストッパーがついていないので、旋回時に液ダレが生じないようにする必要があります。
ポリエチレンシートなど被覆資材を
準備して、消毒にとりかかる。
薬液の注入
注入口(地上部に引き上げたところ)
所定の被覆幅の注入を終えた
ところで、シート被覆を行う。
再度、注入を開始する。
注入後の速やかなシートの被覆
により、ガスは検出されなかった。
土中に突き刺し、手元のレバーで
薬液を注入する。
注入した後はかかとで孔をふさぐ。
千鳥格子状に打ち込んでいく。
薬液を注入する。薬液注入後は
速やかにシートにより被覆する。
平均地温(℃) | 消毒期間(日) |
---|---|
25~30 | 約10 |
15~25 | 10~15 |
10~15 | 15~20 |
7~10 | 20~30 |
■消毒後の注意
■消毒機の洗浄
使用した消毒機内部は必ず灯油で洗浄してください。水による洗浄は消毒機内部の腐食を起こします。